ショウタは以前は同じ会社の同じ部署にいたけれど、つきあうようになったのは、家業を継ぐために退職してからだった。
地元の不動産会社だという。新卒で数年間社会勉強のカタチで幹子の会社に入社したが、社長が引き受けた縁故採用だったらしい。
ふつうの若者。髪は染めてないものの、きちんとしたサロンでカットして、服の趣味もこぎれい。背がひょろりと高いことをのぞけば目立つところもなかった。
ふつうに宴会の幹事をまかされたり、取引先で失敗して怒鳴られたりもしていた。
そつなくなんでもこなすタイプではなかった。ポカも多かった。
それでもまわりに可愛がられていたのは、その人柄の良さゆえだと思う。
辞めることになったときに、送別会を開くことになり、その幹事は順番制で幹子が引き受けた。
オレンジのガーベラをベースにして、黄色や赤色の明るい色の混じった花束を作ってもらう。
いつもまわりを元気にしてくれる「すこやかな」印象に対するお礼のつもりだったのだ。
送別会の二次会が終わり、電車の時間を気にしながら足早に帰っていると、ショウタが追っかけてきた。
「花束の色が嬉しかった。つきあってくださいっ」
一期下の職場の男性を恋愛の対象と見たことなんてなかったので、いきなりの攻撃に幹子は驚く。
「あ、ごめん、花束がなんて言ったらびっくりしますよね。えっとー、そうじゃなくて、前から先輩の心遣いがいいなあっていつも思ってて、でも、会社辞めたら、もう連絡もできないのさみしいし。メル友から、はじめてもらったら嬉しいな、って思って......」
勢いで言おうと思ってたことが、だんだん尻すぼみになっていく。その様子がおかしくて吹き出してしまった。
メールはいつか電話になり、外で会ったり、幹子の部屋で会うようになるのに、それほどの時間はかからなかった。
それでも幹子は、特定の男性と懇意になることの意味がよくわからなかった。どういうことを話せばいいのか、どういうことをすればいいのか、なにもかもがピンとこない。
聞かれるままに職場の近況を話したり、愚痴を言ったり、その会話すらも手探りだったように思う。
ただ、いっしょにいるだけで楽しい、というのは、人を愛する感情が、ごく自然に身に付いている人が感じることなのだ、たぶん。
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