2006年05月21日

彼女の地雷 わたしの地雷

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 北天神のカフェの二人がけの椅子に座ってアイスティーを飲みながら、ひさしぶりに長い時間をかけて話をした。
 彼女のストレートの猫っ毛は自然な感じの栗色で、昔とちっとも変わらない。
 それからわたしはときどき彼女の地雷を踏んでしまう。これも相変わらずのパターンだ。
 それが何なのかは、踏んでしまうまでわからないものだから、わたしには用心しようがない。
 
 一緒の職場にしばらくいてから、わたしは結婚して仕事を離れ、彼女はステップアップして別の会社でもっと責任のある仕事をしている。
 たとえば、何気なく噂した昔の同僚が彼女と今絶好状態にあることを知らなかったり。聞かれるままに自分の子供の成長を喋っているうちに、彼女自身がなんとなく不安な気持ちになってしまっていたりして。
 それで地雷を踏んでしまったことにわたしが気づくのだ。

 彼女は無意識に地雷を踏んでしまったわたしを責めないけれど、どんどん話のトーンが落ちてゆくのがわかる。そうして弱々しく笑って「まだ買い物があるから」とか言って席を立つ。
 わたしは何度かそういう場面に遭遇しては、ああ、とか思うけれど、それ以上心配することも最近はなくなって、また時間がたって一緒にお茶でも飲めればいいなと思って、しばらくそのまま椅子に座っている。
 
 休日が終わりに近づいた薄闇の中で彼女はどんなことを考えるのだろうか、と思う。
 
 それでもそんな彼女がわたしは好きなのだ。
 いつまでたってもハガネのように無神経になれない彼女が好きなのだ。
 きっと何年たってもそのことを彼女は説明しないだろうし、説明されたってわかりっこないだろう。
 地雷は不幸にもたまたま、わたしが歩いた場所にあっただけ。だから、恨みはしないって思ってくれてるような気がして。それでまた、いつかの日曜日に会いたいなと思ってしまうのだ。

 ねえ。

 わたしたちはたぶん、かつて同じ人を好きだったんだよね。
 時期は違うかもしれないけれど、わたしたちはある時期、同じ人を好きだったんだよね。
 それは、のちのわたしの結婚相手とも違うし、彼女が結婚しようと思っていてぎりぎりに破談にしてしまって大騒ぎになった相手とも違う。
 お互いに、すごく微妙な時期にわたしたちは彼に惹かれていたのかもしれない。あるいはそれは「好き」というよりももっと微妙な惹かれ方だったのかもしれない。
 彼女はそれを尋ねることが、わたしの地雷だと思って用心深くそのことを避けてるのかもしれない。
 あるいは、それもまた、彼女自身の地雷かもしれない。
 だから、わたしたちは、けっしてそのことを口にしない。
 たぶん、一生、わたしたちは、そのことを話さないにちがいない。

 だけど。
 その人に惹かれたことを含めて、わたしは彼女のことが好きなのだろうと思っている。

 アイスティーの氷が溶けてしまって、グラスが汗をかきはじめた。
 そろそろわたしも席を立って、自分の家に帰ることにしよう。

 推測は永遠に推測のまま。
 謎は永遠に謎のまま。

 

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posted by noyuki at 22:05| 福岡 | Comment(5) | TrackBack(0) | 詩とか短文とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月12日

近況

経営悪化のため失業して、長いお休みを過ごしている。
カキモノ、ときどき職探し、ときどき面接、ときどき断られ、ときどき断り。

このままずっと休んでていいよ、って誰かが言ってくれないかな。
そう思うけれど、経済状態がそう言ってくれない。

新芽が芽吹き、花が咲いた。
少し、あせる。
それでもこのままで、と思う。

ひとつだけ気づいたこと。
ひとりで一日家にいたって平気なくせに。
夕刻に外に出てみると。日差しのあたたかさが身にしみる。
誰かを会って話してみると、人のあたたかさが身にしみる。

孤独は嫌いじゃない。
だけども、ひとりでは生きていけないんだと。
物理的に大丈夫でも、心はひとりじゃ生きていけないんだと。

そんな単純なことに、はじめて気づいた。

長い長い、夏休み。
posted by noyuki at 14:33| 福岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする