2006年07月10日

その空が言った

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一生答えの出ないものを抱えて生きてゆけ と
その空が言った

生きているのは何のため とか
どういうふうに生きればいい とか
この世界には 
おまえのための理由などない

自分の中の混沌を説明できないのと おなじく
他のものたちの混沌を 説明できるわけがない
それを 思い悩むのが 
おまえの傲慢だ と 

その空が言った

季節がめぐり 赤い花が背高く 伸びるのも
雲に覆われて 雨が地面をぬらすのも
見上げている 空が青いのも
ただ そこにあるだけ

当たり前としてあるものに 理由なんてない
偶然としてできあがった世界に 意志なんてない
それを神の意志を呼びたいのなら 勝手にそうすればいい
自分が存在することに感謝したいのなら 勝手にそうすればいい

だけども おまえ自身が存在していることに 理由なんてない
理由を探すのが おまえの傲慢だ

一生答えの出ないものを抱えて生きてゆけ と
その空が言った
なにひとつ答えのない世界を そのまま抱えて生きてゆけ と
その空が言った

空は たしかにそう言った




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posted by noyuki at 13:57| 福岡 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「船泊まりまで」片山恭一 小学館

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美術館で絵を見て、わけもなく不安な気持ちになってしまい、金縛りのようにその絵の前から動けなくなってしまったことがあった。わざと微妙にデッサンや構図を崩すことによって、不思議な感覚を見る者に感じさせるのだという。
この小説にはそのような不安感があった。

一組の夫婦のおだやかな日常が描かれていた。
だけども。なんか変じゃないか?
生殖機能のなさを理由に前妻に離縁された男と、毎夜その男のとなりの部屋で泣き続けていた女。
そんなふたりの日常がこんなにもおだやかで淡々としているなんて・・・
女の方は子供を身ごもっていて、それは妹夫婦の子の代理母としてである。たとえ違法であったとしても、困っている妹に手をさしのべるのは自然なことであるかのようにそれを選択し、そこには何の葛藤もない。
夫婦は煙草の自動販売機が家の前にあるのを活用していくばくかのお金を稼いでいる。それが自然な経済活動であるのと同じように、代理母となることもそれと同じくらい自然であると彼等は考えているように思えてならない。
自然ではない。
それに誰も選択していないことを決断することは重責でもある。
そのことに彼等は気づいていない。あるいは想像できていない。あるいは目をつむっている。
そうして、だんだん内側からの崩壊が始まる。

それでも読後に不安定な世界にため息をつきながら、もしかして誰もがそうなんじゃないかと思った。
あまりにも簡単に選択できる世界で、わたしたちは無意識に「より合理的なもの」を選択しているじゃないか。
人間は好き嫌いで何かを選択できる生き物だ。
なのに経済効率を優先させる社会の中で、もっと簡単な公式に当てはめていろんなものを選択しているだけじゃないか。


それではカラダが内包しているほんとうの感情はどうなんだ?
というような不安をつきつけられたような作品だと思った。

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posted by noyuki at 12:49| 福岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 見て、読んで、感じたこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする