2006年12月02日

「失われた町」三崎亜紀

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三崎亜紀さんの文章のしんとした感じがとても好きで、この作品に関しては、「おもしろい・おもしろくない」よりか「好きな文章を読み続ける」と言った感じだった。
町の消滅、それに関連する「愛する人の喪失」がテーマ。
だけども、どこか登場人物がまっすぐに「喪失感」をぶつけていないような気がしてならない。
まっすぐに「言葉にして」喪失感を言い表すと、消滅した町に取り込まれてしまう、汚染されてしまう、という状況そのままに。

だけど、それはもしかしたら、今のわたしたちの状況そのものではないだろうか。
「まっすぐな喪失感」を、この騒がしい世界でじっと持っていることをわたしたちは忘れてしまっているのかもしれない。
この世界では「喪失感」は、どれだけだって薄められるものなのだ。
忙しさに自分を忘れたり、何か他のものに転換したり、そういうふうにして、喪失感はいくらでも薄めることができる。だけども、けっしてなくならないものなのだ。
そうして、何年も何年も、それを抱えて生きていく人がこの物語の中にいる。そのことが、じわじわと心の中に広がってゆく。

ムラカミハルキの描くのとは違う喪失感が、時がたつにつれて、じわっと心の中に広がっていくような作品だ。
もしかしてら、ずっと、時間をかけて読み継がれていくようになる作品なのかもしれないとふっと思った。

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posted by noyuki at 22:15| 福岡 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 見て、読んで、感じたこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする