2007年05月31日

血を流すこと

わたしの書くものを読んで、「これは、ちゃんと血を流しているね」と評する人がいる。もちろんいつもではなくて、「これは血を流していない」と言われることもある。

そういうふうに言われるととても不思議な気持になる。

自分自身が、左手の手首を空に掲げてすっぱりとナイフで切ってみせて、そこから真紅の血がひとすじ流れているところを思いうかべてみる。
痛いとは思わない。
たぶん、今そこに流れている血を、わたしもまた、見てほしいと思っているんだろう。

見てくれてますか?
からだの中に流れている血の色を、ちゃんと見てくれてますか?

そう思いながら。
乾いた草の上に倒れ込んでみる。
呼吸をしながら、流れている血が乾くまでのあいだ、空をゆっくりと移動してゆく雲を見ている。

ああ。呼吸をするように書いてゆきたい。
血を流して。笑って。激怒して。
それを当たり前のこととして、書いてゆきたい。

全部が全部を、わたしの日常として。




banner_04.gif
人気ブログランキングへ
posted by noyuki at 22:25| 福岡 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月24日

「アキハバラ@DEEP」石田衣良

51TWV8568SL._AA240_.jpg

コンピューターの人工頭脳を扱う物語なのに、人のカタチの良さが際だっている小説。
石田衣良さんのそんなところが好きです。

若者はみんなカッコわるいのに軽やか。
吃音やフリーズなど、できないことをたくさん持っているのに、自分の才能の中を自由に泳いでいる。
その才能で巨額の富を築くことだってできるのに、それ以前の「素晴らしいものを創る」ことにこだわっている。

そういう新しい若者の価値観を描いているようにして、そこに作者の芸術への真摯な姿勢が見え隠れしているし、何よりも、弱さを持った人々が新しい自分の枠を創ってゆくことを認めてくれている。

アキハバラ@DEEPを読むと、人間が好きになれる。
中途半端だけど、それでもなにかを創りたいと思う自分を好きになれる。

軽やかなのは、軽いことではない。
軽やかでいたいと思う強い意志がなければ、軽やかではいられない。

banner_04.gif
人気ブログランキングへ
posted by noyuki at 22:12| 福岡 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 見て、読んで、感じたこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月23日

mortal

 最近どお? と聞かれたら、コップの水ギリギリかなあって状態。
 実はちょっと前からそうなんだけど、そういうことに気づくのはずっと後で、なんでこんなに仕事溜まってるんだろうとか、なんで送ろうと思っていたメールのことを忘れているんだろうとか、いつもそんなところから、ほつれがはじまってゆくんだ。

 そんなときわたしは、ドーム型の天空の向こう側が透けてみえような気がする。
 この向こう側には「生きていない世界」があって「生きていない時間」があって。とりあえずわたしは今ドームの中にいるんだけど、その向こう側が透けて見えてて、うざったくってしょうがないって感じ。

 もちろんわたしは、向こう側に行ってみたいなんて思っていない。
 
 だから必死になって「メメント・モリ」の反対は何だったっけって考えるんだ。
 死を忘れよ、いつか死ぬことを忘れよ、大切な人が死ぬこと、大切なものを失うことを忘れよって。
 
 夜空に向かって煙草の煙を吐きかけて。
 犬のモモが、なにかを察するようにその様子をじっと見つめてくれている。
 
 生きることは、その向こう側にあるはずの死を思うことじゃなくって。
 
 彼女が必死に怒って真理を求めてることを羨ましくなって応援してみたり、いっぱいになってしまったコップの水がわたしの中から溢れてゆくのをじっと眺めていたり、意味のないくらいにただなんとなく、人を好きになってみたりしながら。

 それがいつかは終わるものであることを、強い意志で忘れ続けてゆくことなんだと思う。
 今日はそんなふうに思いたい夜。
 
banner_04.gif
人気ブログランキングへ
posted by noyuki at 22:25| 福岡 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする