2010年04月21日

「blue」  小学館発行「正午派」佐藤正午著より

佐藤正午文学的裏切りの心地よさを味わいたければ、「正午派」を読むといい。
この本は作者だけでなく編集者も含めて、「佐藤正午文学的裏切り」をみんなで共謀してやってのけているという感じがする。

特に書下ろし短編「blue」がすごい。
描写の素晴らしさ、ストリーの裏切り方、掲載の仕方、すべてを含めて。
掲載ページがわからないという方は、ひっくり返して裏までめくって丹念に探してみてください(謎)

「blue」は、小説「アンダーリポート」のスピンオフといった感じの短編。
いや。スピンオフと呼ぶには重過ぎる結末。


アンダーリポートは「メビウスの輪小説」と呼ばれているように、ラストまで行って、まだ冒頭の部分を読み返してしまう小説である。
だから、メビウスの輪のようにずっと、この小説の中をぐるぐる世界がまわっている印象だった。



ところが「Blue」で、このメビウスの輪から飛び出して、ひとつの結論が導き出される。
その結末の意外さには愕然としてしまうしかなかった。


千野美由起は殺してやりたいほど古堀を憎んでいたのか?

たしかに、つきあっているときにムカつくことも多かったし、仕事上の不都合も抱えている。

それとも、叔母(旭真理子)に古堀が疑惑を持ったために、サオリと共謀した?


最後まで、幾人かが見え隠れしていて、それでいて、ほんとのたくらみも犯人もわからない。

わからないというよりも、また、どんな可能性にも読める。

そして、その俯瞰した描写がいっそう胸に深く突き刺さってしまう。

作家は、いつか自分の死をいうものを作品の中で受け入れていくような気がする。
そうしてわたしには、「blue」がそういう作品であるようにも思える。


加えて、完結した作品から別の物語が生まれていくとはどういうことなのか?
あらためて「アンダーリポート」を読み返してみると、伏線らしきものが見え隠れするのだが、それは、「blue」が発表されるまでは、何の伏線とも思えなかった箇所。

わたしは、愕然として、その「文学的裏切り」を味わうしかない。
愕然。
その言葉以上のなにも出てこない。

「blue」にはほんといい意味の裏切りがいっぱい詰まっている。


  人気ブログランキング へ
人気ブログランキングへ

posted by noyuki at 16:44| 福岡 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 佐藤正午系 盛田隆二系 話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする