ダンスホールは推理小説だと思う。
読者が小説を読みながら、全体の動きと感情を推測するような推理小説だ。
時系列も事件も、バラバラになったジグソーパズルのように描かれている。
つまり、一度読んだだけではどうしようもないほどに難解だ。
だから、何度も読み返し、時系列を自分なりに繋げ、そして繋げる過程で「このとき、どんな気持ちでこういう行動をしたのか?」と考えていかなければどうしようもない。
それで、ジグソーパズルを解くようにこの小説に取り組むことになる。
その作業に夢中になることはとても楽しかった。
もともと「きらら」の携帯メール小説に登場していた西聡一は、自然にトラブルを引き受けてしまうような愛すべきキャラクターだし。
護国寺の看病のためにこの町にきた大越よしえも、すべてをつなぐ役割をしている戸野本晶も、護国寺も、病気であると称されている「私」も、すべての人間の感情が見えてくるにつれて、この小説に夢中になれてくる。
大越よしえのラストが今はいちばん心に残っているが、これからわたしは、護国寺について考えたり、「私」についていろんなことを思ったりするのだと思う。
よくわかる。
描かれていることを読むだけが小説ではないのだ。
複雑な構造でありながら、素材のみで投げ出された中に、いや、一見素材のみで投げ出されたように思えながらも複雑な感情が織り込まれている文章、これもまた、小説なのだ。
それを、繋げるという作業の中で見えてくる、だんだんクリアになってくる登場人物たちの心の動き。
ひとめで現実世界の人の心がわからないのと同様に、何度も何度も観察しないとわからない、登場人物たちの心の動き。
それに夢中にさせてくれる小説だと思う。
ネタバレ板をこちらの方に作っています。読みまちがいもたくさんあるかもしれません。
http://shogofan.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=3204900
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