そして、たしかにいい作品だったのに一年を通して振り返ると、それほど心に残っていない本もあった(これも気持ちの問題です)。
人間は現実が大変なときは本も読めなくなるのかもしれない。
物語の世界に戻るまでとても時間がかかった。
新しい作家の方との出会いが少なかった。
同じ本を2度も3度も繰り返し読むことがなぜか多かった。
そんな2011年だったけれど、それでも振り返ってみると、こんなにたくさんの出会いがありました。
10 「くちびるに歌を」中田永一
五島列島の合唱部の話。どす黒いところがなくて、こまやかな部分も見られて楽しかったです。
9 「仏果を得ず」文庫 三浦しをん
三浦しをんさんをたくさん読んだ一年だったが、文楽を描いたこの作品には新しい出会いがありました。求道のヨロコビというものが溢れている作品だと思います。
8「スローハイツの神様」辻村深月
辻村深月さんにはじめて出会う。セリフがキレがよく心地よかった。また何か読んでみようと思っているがまだ叶っていません。
7 「焼け跡のハイヒール」盛田隆二
いや、「きみがつらいのは、まだあきらめてないから」を入れるべきだろうと思ったけれど、とてもこの作品が好きだったので、ムック本(大人婚)に掲載の分だけど、あえてこちらを。主人公の強い生き方が物語全体をひっぱっていて、とても嬉しくなった物語。そして泣きました。本になるのを楽しみにしています。
6 「困っている人」大野更紗
友人の中で大ブームになった本。闘病ものであるけれど、楽しく、そして、人を想う気持ちの強さが物語をひっぱって行く様子に感動しました。彼女の人生に幸多かれと祈ります。
5 「偉大なるしゅららぼん」万城目学
相変わらずの壮大なほら話。そして、情景のひとつひとつが目にうかぶ細やかな描写が楽しかったです。まったくテンションが落ちてないのがすごいと思います。
4「事の次第」文庫版 佐藤正午
単行本「バニシングポイント」でかなり前に読んでいる。しかし、昨今の佐藤正午さんの作品に通じるものがあって、今回読み返してみて、その手法のすごさに改めて感心させられた。クールな文章がほんっっとカッコイイ作品でした。
3 「モダンタイムス」文庫版 伊坂幸太郎
今回上下巻の文庫。しかも、文庫化にあたって、こんなに結末が変わっていたのが驚きだった。現代には現代にそぐう作品がある。そういうものを完成させるためにこれだけの加筆修正は賞賛したい。ハードカバーのストリーも文庫のストリーも、選べないほどどちらも好きでした。
2 「身も心も」 盛田隆二
高齢者の恋愛にドキドキさせられた。純粋な美しい気持ちが浮かび上がり、好きな人のために生き延びたいという欲求に、生きることの意味を考えさせられた。とてもいい作品です。梶芽衣子さんで映画化、というのがほんとに実現したらいいなと思っています。
1 「舟を編む」 三浦しをん 光文社
この本に出会えて(幸せだった感)が一番だった作品。辞書を作る、という目標のために集う人の人生が長いスパンで描かれている。どの人も、実現させたいもののためにキラキラしている。「職業もの」というわけでもなく、その職業に関わる人の「深さと真摯さ」がすごく克明かつ楽しく描かれていた。
読んで幸せになれる本、という点で2011年に出会えた最高の本でした。
おまけ。「3月のライオン」「テルマエ・ロマエ」「ヒストリエ」など、コミックの新刊に楽しい作品の多い年でした。小説では「きらら」に連載中の佐藤正午さんの「鳩の撃退法」がどうなるかわくわくどきどき。
これらは未完の作品ですが、今年読んだ中で幸せだった本としてぜひ、名前をあげておきたいと思いました。
今年1年出会えた本に感謝をこめて。そして来年出会える本を心待ちにして。
今年1年を締めくくります。
来年もまたよろしくお願いします。
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