2013年10月30日

気持ちの備忘録

きれいな和三盆


むかしコミュニケーションの授業でアサーションってヤツを習って。
ああ、これで、他人とちがう意見を言うときに、憎しみとか逆ギレとかしなくて済むんだって思ったんだよ。
アサーションっていうのは、なんていうか、「悪意なく、他人に反対してもまったく問題ない」みたいな話で。

でも、そう思いはじめてしばらくしたら、なんだかすごく感情が平坦になってしまったようで、すごくさみしくなってしまった。

今でも、仕事で人と違う意見を言うことももちろんあって、いや、ほんとは仕事とかそういう話じゃなくて、違和感をきちんと表さないと自分が気持ちわるくって。
それで、こちらがふつうに言っても、人はいやだなあと思ったり、自分自身の状況がそれによって浮き上がってしまったりする「空気」がわかるんです。

でも、自分が主体だから自分が言おうと思うことは言っていいや、っていうのと同時に。
なんていうか、そのウエットな感じとか、少しの後悔も含めてすごく好きなんだと思う。
それは、ずっと小さいときに植え付けられた、すごく保守的な感情で、今では自分の中でオールリセットできたと思ってるんだけど、それでも愛してるっていうことなんだと思う。

あと、人を想うときに、他人だからどうにもならないこともあるんだけど、その、「どうにもならない感情」とかも。
ずっと若い頃にすごく愛していた感情なんだと思う。
ずっと引きずってはいない。
でも、そういうマイナス感情をなくしてしまったと思っていても。
なんていうか、ときどき顔を出して見える、甘くせつなく気持ちがなつかしくなってしまうんだ。

もう、昔の自分とは違うけれど、昔の行き場のわからなかった自分のことも、最近はけっこう愛してるんだなって、今はそういうふうに思うことにしています。



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posted by noyuki at 22:00| 福岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月09日

三浦しをん 「政と源」 集英社





「まほろ駅前多田便利軒」が若い男たちの話なら「政と源」は年老いた男たちの話である。
え〜〜。何が言いたいかと言うと、「まほろ駅」レベルの期待満々で読んでいただいてぜんぜんオーケーだってことです。

主人公のひとり有田国政は定年後、妻に熟年別居されたさみしい一人暮らし。四角四面で甘え下手でプライド高い紳士。
もうひとりの主人公堀源二郎は家族にとうに先立たれた「つまみ簪職人」。禿頭の横に残った髪を赤や染めてしまうファンキーじじいである。

二人の住むのは江戸川区Y町。水路を舟で行き来しながら交流をあたためる二人であるが、これがまた一筋縄ではいかない短編ばかり。

そこに源二郎の弟子の徹平や、徹平の彼女のマミちゃん(髪を染めた張本人)、国政の妻、などを交えた人間模様が描かれているのだけど、三浦しをんさんのリアリティ、心の奥底まで見てきたような「はっきりとした描写」には本当に驚かされる。

戦災にあうということ。
ひとりぼっちで年を取るということ。
老齢で家族にさえも疎まれること。

それがどういうことなのか、ひとつひとつ身につまされ、そして、わたしたちは、また、ひとつひとつに救いを見出すことができる、これはそういう物語である。

いずれ年を取ることをおそれ、そこに何の希望も見いだせないならば、こういうふうに生きてみるのもいいかもしれない。
不自由、不都合もどんどん増えてくる世界でも、なんか、楽しそうではないか!わたしの老後!
と思える作品であります。

これ。映画よりか、テンポよくドラマで見てみたいですね。
キャストは誰? なんて考えるとほんとわくわくします。

あと、本編の挿絵のマンガも素晴らしい! これはどなたの作品でしょう?


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posted by noyuki at 15:34| 福岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 見て、読んで、感じたこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする