2015年02月22日

「アイネクライネナハトムジーク」伊坂幸太郎 幻冬舎


昨年の10月くらいに読んでたのだけど、「鳩」にかかりっきりで、備忘録もなにも書いてなかった。6つの短編からなる、これはとても幸せな短篇集。

「アイネクライネ 」 ご存知斉藤和義の「ベリーベリーストロング」の原型となる物語。とはいえ、ラストは予想外の微笑ましさにあたたかい気持になる。

「ライトヘビー」 そのベリーベリーストロングのシングル曲の付録として描かれた物語(一生懸命探したけれど、当時は入手できなかった)。アイネクライネで脇役だったボクサー「ウィンストン小野」が主人公。おかしみのある話。

「ドクメンタ」 アイネクライネでパソコンを蹴飛ばしてデータを消した藤間さんの話。

「ルックスライク」 アイネクライネで主人公の友人夫婦だった織田夫妻の子供が登場。

「メイクアップ」 昔のいじめっ子に仕事で再会する話。

「ナハトムジーク」 さて。いろんな短編に少しずつ関係のある人々が出てきて、ジリジリしてたのが、ここにきて、みんなが繋がってくる。時間を行きつ戻りつしながら、ボクサー「ウィンストン小野」の試合を時間軸の横糸に勢ぞろいしてくる。日本人の素朴なボクサーをただ応援するのに、個々の人生の来し方行く末が集結してる感じがすごくおもしろかった。

気がつけばまた、登場人物の関係をメモしながら読んでました。

そういうと、仕掛がおもしろいだけじゃないか、と思われそうですが、伊坂幸太郎の描く人間のシンプルさ正直さおかしさが目一杯に生きていて、しかも短い物語がとても気持ちよく完結をしていて、この気持ちよさが伊坂幸太郎なのだ、と改めて思った作品でした。

追記。 本屋大賞の候補に選ばれたとのこと。おめでとうございます。派手ではない小品揃いで、非常に上質な文章を味わえる点では、こういうのが選ばれてもいいなとも思います。

追記その2。小説での「ウィンストン小野」の試合の結末は、去年のソフトバンクの優勝戦を思い出させました。読んだのと、観たのとほぼ同時期。ちょっとしたシンクロニシティ。


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posted by noyuki at 16:05| 福岡 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 伊坂幸太郎の備忘録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする