2015年06月20日

「書くインタビュー 1」佐藤正午 小学館文庫



メール形式のインタビュー。
その「1」では、「身の上話」とそれ以前の作品、インタビュー中に描かれた「ダンスホール」の解説、これから書く予定の「鳩の撃退法」のことが、メールの質問に答えるというカタチで書かれている。

ただの作品解説と思いきや一筋縄ではいかない。最初のインタビュアーはあまりの噛み合わなさに失踪するし、二度目のインタビュアーも作家の機嫌を害して、秘書の照屋氏の代筆、口述筆記の返事をもらったり(笑)
偏屈で気分屋の作家の本音を聞き出すまでの過程がおかしくて、笑いがこみあげてくるメール形式のロングインタビュー。

作家にはいろんな顔がある。執筆する作家、プロットを考える作家、リアルに生活している作家、喋る形式でインタビューを受ける作家。
先日サイン会までおしかけて佐藤正午氏と短い会話をする機会を得た私だが、印象は物静かに喋る方という印象だった。それは「喋るよりも書く方が性に合っている作家」のひとつの顔なのかもしれない。

「書くインタビュー」の作家は全然違う。偏屈で(失礼!)、きつい冗談も、嘘もはぐらかしも筆なめらかに連発してくれる。
そして、翻弄されながらも食らいつくインタビュアーが、作品の構造を聞き出してゆく。

「心の病」にかかっていた時期やそのときの行動、それが「ダンスホール」という作品にどういうふうに反映されているか、などは「喋るインタビュー」では辿り着けない領域だと思う。
インタビューを受ける作家のイメージを楽しむにも、少々難解な「ダンスホール」の解説を読むにも貴重な一冊です。

「書くインタビュー 2」については、また別の機会に。

*****

個人的ネタバレ感想。

210ページ。「ではこの(ダンスホールの)偏執狂的な文体に気づいた鋭い読者の方や優秀な編集者がじっさい正午さんの周りにいましたか?」というインタビュアーの質問について。

わたし自身は「しかけはわからなかったけれど、感じてはいました」。
「なんか変な文章だな、いつもの軽やかさがないな、もしかして、心の病という話も聞いてたけれど、まだ全快されてないのかな?」と勝手に心配していたほどです。
そしてそう感じたことなど誰にも言えず悶々としていました。

ああ、そういうことだったのか! とほんとにびっくり。
こうして翻弄されるのが正午ファンの醍醐味なのだと再確認しました。
それがどういう「しかけ」だったのかは、ぜひ、このインタビューでお確かめください。


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posted by noyuki at 14:46| 福岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 佐藤正午系 盛田隆二系 話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする