夢をみた。
こんな夢だった。
わたしはどこかの椅子にひとり腰掛けて短編小説を読んでいた。
コンクリート壁にはりついた木製のベンチだ。背もたれはない。
その短編小説は「ジェットコースターのようなめくるめくストリー」ではなかったが、かなり夢中になれる出来だった。
特に着想に感心した。
「そうか、こういう書き方をすればいいんだ。この方法だと、わたしの伝えたいことが十分に伝わるにちがいない」
それから、わたしはもうひとつのことに気づいた。
わたしは今、自分の夢の中でこの本を読んでいるのだ。
ということは、他の誰もこの本を読んではいない。
わたしが「着想」をちょうだいして、自分の文章で書いたとしても、バレることなどないのだ。
これはけして盗作ではない。
そう言い聞かせながら、わたしは夢の中で「この本のあらすじや構成」を頭にまとめた。
簡単なものだった。
あとは、起きてこれを再現するだけ。
そういう夢だったはずなのに。
目覚めてみるとその「本の内容」だけがどうしても思い出せないでいるのだ。
脳も記憶も、すべて自分の中にあるものなのに、いつもせつないくらいに、わたしを裏切るなあ。
最近だんだんそう思うようになってきた。

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