
父よ、ロング・グッドバイ 男の介護日誌 -
こう見えても介護職だもの。
ムカつくことだってあるし、愚痴りたいことだっていっぱいある。
傲慢な家族だっているし、お手伝いさんみたいに思ってる人もいるし。
理不尽に怒鳴られることだってある。
個人情報の守秘義務があるから言わないけど。
本書には、母親の死から、父親の認知症、病気の妹を介護していく過程が克明に描かれている。
これから介護をする方にとっては「参考書」になる部分もたくさんあると思う。
(↑ というと、この本に描かれている時代からまったく変わってないのか? と思われるとアレなんですが、改善されている部分ももちろんあります)
ところで、ムカつくこともたくさんあると言いながら、なぜこの仕事を続けているかというと、やっぱり楽しいからだ。
認知症の人が喋る(わたしと違って見えている世界)の話を聞くのが大好きだ。
精神の病のある人の繊細な世界と考え方を聞くのも大好きだ。
わたしとはちがった世界の見える人たちが語る(その世界から発信する話)。
不謹慎かもしれないけれど、それは小説のようにわくわくしておもしろい。
そして、「ああ、こういうふうに世界が見える人たちがふつうに暮らせるにはどうしたらいいんだろう?」とも考える。
そしてこの本の中にも、介護が必要な方々の感性がいきいきと描かれている。
お父さんに煙草をあげたときの反応。
介護職員「乾あかりさん」との心の交流。
戦後、奥様と出会ったころの昔話をするときの表情。
最後の「エピローグ」で判明する、とてもせつない話。
ひとりひとりの人生が「物語のように」いきいきと描かれていて、とても読み応えがある。
本書での家族の介護は「シャレにならないくらいに大変だったんだな」と思うし、まだまだ改善の余地はたくさんあるだろうけれど。
それを含めて「悪いところ」も、「わるくないなと思うところ」も描かれている作品です。

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