2018年11月23日

「フーガはユーガ」伊坂幸太郎 実業之日本社



フーガはユーガ
フーガはユーガ


「伊坂・新刊・サイクル」みたいなものが身についている。
「そろそろだ」「そろそろ出るはず」とソワソワしだすと大体ころあいよく発売だ。
今回は、少々いつものサイクルよりも長かった。だから(すごい長編が出るのかも)と思っていた。
だが1年ぶりの新作は(すごい長編)ではなかった。そのかわり(ものすごい作品)だった!

風我(フーガ)と優我(ユーガ)は双子の兄弟。あまり幸せではない。父親がしょっちゅう暴力をふるうからだ。母親もかばうこともできず、二人は父親にひどい目に合わせられないように気をつけながら生活する。
ふたりは瞬間移動ができる。お互いを入れ替わることができるのだ。誕生日の日限定だけど。
そんなふたりの中学時代やもっと大きくなってからの出来事が描かれているのだけど、そんなに爽快な人生でもなく、不愉快なこともそれなりに起こる人生だ。
もちろん神様のように「幸せと不幸せの総量」を俯瞰して描くことなんてできないけれど、「こんなもんかな」「そう、こんな感じで確かな不幸ってあるよね」くらいの割合で不幸な出来事も起こって、そして、風我も優我も「重たくなったり軽やかになったりしながら」それを乗り越えてゆく。
変わらないことは「くさらないこと」だ。「なんとかしたい」って思うことだ。「伊坂幸太郎の見えざる手」は、自然自然とそういう方向に向いていく。「見えざる手」としか言いようのないものが連れていってくれる場所。その場所の感じがわたしはたまらなく好きなのだと思う。

結末は喋りたくない。

だけどもすごく泣いた。号泣した。もう、なにかわからずに声をあげて泣いて、自分でもびっくりだった。
悲しかったからではない。なんというか、こんなことが!というか、すごいものを見せられてしまったというか、呆然というか。
あれは何だったんだろう?
自分の予想を超えるものを見せると、あんなふうになってしまうんだろうか?


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posted by noyuki at 22:35| 福岡 ☀| Comment(0) | 伊坂幸太郎の備忘録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする