第一印象は「マンガみたいでとてもおもしろかった」です。
意味とか考えずに楽しめる。マンガ的な挿絵もあるし。たぶん、コミックで読んでも違和感ないと思う。
お菓子メーカーの宣伝部に勤務する岸くん。政治家の池野内議員。タレントの小沢ヒジリ。この3人は現実世界では繋がりがないのに「夢の中」では繋がっている。偶然は重なり現実世界でも3人は知り合い、共通の敵を乗り越えてゆく。火事だったりクレーム問題だったり理不尽な会社組織だったりキャンプ場のクマだったり、パンデミック寸前の新型インフルエンザだったり、そういうヤツ。
登場人物はアクが強かったり憎めないキャラだったり。ときには痛快に敵をやっつけ、ときには窮地に追い込まれる。ほんとマンガみたいです。
夢を「ネットやゲーム」みたいなものに置き換えるとわかりやすいのかも。(おかしの異物混入)や(新型インフルエンザ)や(謝罪を求める群衆)とか。やっかいな問題が次々に襲ってくる。
そういったものに立ち向かうわけだけど、(正義)とはちょっとちがう。
なんていうかもっと「個人的な正しい気持ち」という感じのもの。
その「個人的な正しい気持ち」が、やっぱりいいなあとずっと思っていて、それが伊坂幸太郎をいくらでも読み続けられる理由なのかもしれません。
いや。
あまり読み解きすぎるのもよくない。純粋にマンガみたいに楽しみたい作品です。
追記「きらら9月号」の伊坂幸太郎氏のインタビュー
小学館きららのサイトはこちら
ご本人が作品について語ってくださるのは嬉しいですね。「クジラアタマの王様」の解説で「モンスターハンター」という言葉が出てきて笑いました。読後に読んでほしいインタビューですが、見出しの一行だけ紹介させてください。「根底では、真面目な人に報われてほしいと思っています」。伊坂文学の(正義的なもの)って、この言葉につきると思います。
おまけ、アイネクライネナハトムジークの後編が発売になりました。
こんな複雑な話をコミカライズなんて不可能じゃないかと思ったけれどもすごいことになってます。
「絶対無理でしょうけれど、いくえみ綾さんが漫画にしてくれるんでしたら、幸せですよね」という伊坂幸太郎自身の言葉から動き出したプロジェクト(作者あとがきより)だそうです。
上巻の感想に「原作も読んでみたくなりました」というものが多く嬉しくなっちゃいました。
伊坂幸太郎の中でもとくに好きな一冊の本として大事にしていたものが、コミックになり映画になり、いろんな媒体に広がっていくのはとても嬉しいこと。どんな映画になるのか今から楽しみです。
映画『アイネクライネナハトムジーク』公式サイト主演:三浦春馬/原作:伊坂幸太郎/監督:今泉力哉、映画『アイネクライネナハトムジーク』9月20日(金)全国ロードショー

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