村上春樹の短編の中で好きなものをみっつあげるとすれば「午後の最後の芝生」「プールサイド」「品川猿」。
「いい小説」はタイトルも存在感もなくして、いつのまにか「自分のカラダの一部」になっているような気がします。
「品川猿」もそんな一編。
今回「文学界2月号」でその品川猿が告白をしているというので、読んでみました。
品川猿は品川にはおらず、古びた温泉にいました。
あの頃からだいぶん年をとっていました。生い立ちについても正確に語ってくれました。
幸せな生い立ちではあったものの、猿なりの葛藤があり、猿なりの「愛」についての手段や思いがあったようです。
品川猿が不思議な能力を持っていたのはご存知のとおり。
そしてなによりも憎めない。やはり私は品川猿のことが大好きだと思いました。
そして「東京奇譚集」の「品川猿」も読み返してみました。
2005年といえば15年前。意外な結末にもう一度愕然としました。
「知っていることの苦しさ」も「愛の苦しさ」もふりかえれば過去のものかもしれません。
それでも過去の「愛の記憶」はずっとずっと今につながり生きるための熱源となっている。
15年分年をとったのは品川猿も私も同じです。
年老いた今の品川猿のメッセージもまた、わたしの中に染み込んで、これから「わたしのカラダの一部」になっていくような気がしました。
文学界の村上春樹の短編のシリーズ、どれも好きです。本になるのを楽しみにしています。

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