2021年10月29日

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」2 ブレイディみかこ




「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の第2巻にして完結篇!


イギリスっていろいろ問題があって大変だろうなあ、プレグジットとか移民とか人種問題とか格差社会とかほんとにいろいろ!

でも実はこれ、日本も同じような問題に直面していることも多いんですよね、たぶん。
問題は「直視するか」「オブラートにつつむか」くらいの違いのような気がします。

カトリックの名門小学校から、近くの「ちょっと昔は荒れていた」公立中学校に入学した日本人と英国人のハーフの息子の目でみたイギリス社会。

正直「え〜!大変そうだな」と思います。
実は、我がムスメは、上品な小学校から、学区の関係で「悪評高い公立の中学校」に入学するはめになり、カルチャーショックと危険な環境に対応できずに、早々と別の中学校に転校してしまいました。

荒れた中学で最後まで過ごした同級生の母親たちが「いい経験になった」「一生の友達にめぐまれた」なんて言ってる人たちを見て「けっ」なんて思うことも、そりゃ、もちろんありました。

でも、人間だもの。
学校くらい自分の好き嫌いで選んでいいと思うよ。

ロック好きの母ちゃんの息子は、本当にこの公立中学でいろんなことを学んできました。
自分自身がホワイトではないこと、そしてターバンをつけた黒人の転校生が音楽のコンサートでびっくりするような歌声を披露すること。

多様性の格差社会で起こっていることをまっすぐな目で見ていて、すごいなあと思ってしまう。
そして息子の視野はだんだん広くなり、公正なものになってゆく。
それが読んでいてとてもわくわくしました。

「君たちは社会を信じられるか」という章が好きです。

息子の視点は多様性と「社会を信じる力」に満ちています。

社会を信じるとは、どういうことか?
社会はもう少し複雑かもしれないけれど、彼が「社会を信じる」というテーマを掲げたときの視点の素晴らしさには本当に唸りました。
いい子に育ちました。

「再び、母ちゃんの国にて」の章。

ここでの「帰国のさいに日本の由布院温泉に、祖父母と犬と行く話」はやさしさと思いやりに満ちていました。

家族のやさしさ、その要となっている息子自身のやさしさ。

最期の空港での別れのシーンまで、本当に何度も何度も心を揺さぶらて大泣きしてしまいました。

「一生モノの課題図書」というキャッチコピーに偽りはないけれど、もっとラフな感じにいろんなことを語ってくれている本であります。
ふらっと読めて、そして「ああ、読んでよかったなあ」と思える一冊です。



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posted by noyuki at 20:06| 福岡 ☀| Comment(0) | 見て、読んで、感じたこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする