2011年07月14日

「身も心も」盛田隆二 光文社 「テーマ競作小説 死様」




恋をしたい。
ずっと先まで年齢を重ねたときに、こんなふうに誰かのために生きたいと思うような恋をしたいと思った。

もっともそんなに悠長な話ではなくて、満身創痍で、いつ明日がなくなるやもしれない「カウントダウン」状態で、(このまま会えなくなってしまうのではないのか)と不幸な結果が頭をよぎる場面もあるわけなので、この感想は全く悠長としか言いようがないのだけど、それでも読後に、「こんなふうに恋をしたい」と思えるような小説だった。

礼二郎75才。幸子64才。
妻をなくした男と複雑な人生を送った女が、絵画教室がきっかけで出会う。
過去を後悔することも多い。若いカップルのような未来があるわけでもなく、あの頃に支配されていた獣のような衝動があるわけでもない。
それでも、しがらみも何もない恋は中学生のように純粋で、そうか、「恋」というものは、静かにまっすぐに見つめていくとこんな姿をしているのだな、と思えてくる。
なんだかうらやましくなってしまった。

物語は本当も嘘も仮定形の未来も見せてくれる。
だから、わたし自身がこういう未来にたどり着けるかどうかは、まったく定かではないのだけど。
加齢は悪いことではないし、むしろ、その年にならないとわからないこともあるのだから「楽しみに待っていなさい」と言ってくれているように思える。

直面する数々の現実がとても克明に、そして時には悲惨に痛々しく描かれているのだけど、そのリアルな描写の世界を超えて、「恋をするときのやさしい気持ち」がしみじみと感じられるような小説だった。


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posted by noyuki at 21:38| 福岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 佐藤正午系 盛田隆二系 話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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