2013年04月21日

多崎つくるについて語りたいことのすべて







そろそろ内容について語りたくなってきた。
ネタバレ多し、想像のみの発言多し。ご了承ください。

* まず、惹きつけられたのは、登場人物たちが「生を獲得していく」過程だった。
わたしたちは実は「最初からなにもかも持って」生まれてきたわけではない。
生まれながら持っている人だっているのに。
自己肯定感も、愛する自信もなく、オトナになってしまっている。
つくるがいい例だ。
傷つきながらいろんなものを獲得していくのに、36才という年齢までかかってしまっている。
わたしも友人たちも、多かれ少なかれ、早かれ遅かれ、そういうふうにオトナになってきたものだから。そのことについては共感せずにはいられなかった。

* 沙羅やクロもまた、つくるとは違うものの、最初から持っていなかったものを、獲得して経験値をあげてオトナになっていった女性だと思う。
沙羅の「わたしとつきあうなら、そういう何かに間に入ってほしくない」という宣言は、とてもセックスや愛に対して誠実で美しい。
クロとの再会のシーンも、クロの優しさで満ち溢れている。
この二人の女性の「生の強さ」が物語の中でとても輝いていた。

* アオはどちらかと言えばこの中では正統にオトナになってきた人のように思う。
アオもまた、スタンダードの確固さを体現している。

というようなことを考えながら読んで、次に、この物語のもつ闇のようなものに惹かれていった。

* シロに代表される闇だ。
ただ、シロについては「外側」から描かれる部分が多い分、闇の深さが計り知れないという印象。計り知れない分怖くもあった。

* そこに灰田と緑川がシンクロしていった。
緑川の持っていた「死のトークン」というものは、めぐりめぐってシロに渡っていたのではないか?
ピアノ、あるいは音楽というものが橋渡ししていたのかもしれない。

灰田は父親が手に入れられなかったソレを欲しいと思っていたような気がする。
シロのオーラを受けてもなお、色彩をもたない「田崎つくる」。
つくるが「死のトークン」に近い場所にいたことを灰田は知っている。

奇妙な淫夢のやりとりが、実はこの「トークン」のやりとりなのだと思う。
シロから受け渡されたものが、つくるという「透明な容れ物」を通り、灰田が口で受け止める。
灰田はそのようにして、緑川から脈々とつながるものを手に入れて姿を消した。
シロはそれを渡したのち、輝きを失って、死んだように生きていく。

* アカに対する仲間の感情も奇妙だと思った。
アカの仕事が「なんとなく好きになれない」と遠慮がちに言う。
自分の負の部分をビジネスにしてるだけなのに、ちょっと言い方がびみょう。

浜松でシロを殺したのはアカだと思う。
死ぬ前に一度浜松で再会しているし、彼女の負を、自分ならどう処理するかを彼は知っている。
誰もそのことは知らない、なのに「好きになれない」という言葉で処理できる直感を彼らは持っているような気がした。

もちろん、これは勝手なる推理で、けして正解ではないものもあると思います。
この物語の「生と死」が布の縦糸と横糸のようにからみ合って、複雑に美しい模様ができあがっている。
その模様が自分にとってはそういうふうに見えた、ってことです。


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posted by noyuki at 21:17| 福岡 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 見て、読んで、感じたこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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