2017年04月22日

「月の満ち欠け」 佐藤正午 岩波書店 (ネタバレ注意)








若い頃「前世」の夢を見たことがある。
わたしは23歳くらいの女性で、戦時中の空襲で防空壕で亡くなった。
やけに生々しい夢だった。
ただ、わたしの記憶はそれだけ。
彼女はそれ以上のメッセージを託さなかった。

人には二通りの死に方があるという。
樹木のように死んで種子を残す道と、月のように、死んでも何回も生まれ変わる道。

「月の満ち欠け」は、月の満ち欠けのように、生と死を繰り返すことを選んだ「瑠璃」という女性の物語だ。

既婚でありながら、三角アキヒコという男性を好きになり、そして鉄道事故(自殺?)でなくなった瑠璃。
瑠璃は何度も生まれ変わり、アキヒコの元に行こうとする。

「ラブストリーなの?」「ミステリーなの?」「SFなの?」という問いかけには、「その全部!」と答えるしかない。

三角くんの目線で描かれる「瑠璃」は、髪の分け目から、たよりない短い線のような唇、そして会話のひとつひとつまで、とても愛しく美しく描かれていてジンとなってしまうし。
生まれ変わった「瑠璃」たちも、まっすぐに一本の芯を持って、7歳や8歳になると三角くんとの記憶や出会った場所を求めてゆく。
「純愛」という言葉が、わたしのカラダの中の冷えた鉄パイプだとしたら、そこに温かいものが流れはじめ、パイプそのものが温かくなっていくような感じの、あたたかい「純愛」を感じました。

ところがこの「月の満ち欠け」のような生まれ変わりが、一筋縄ではいかないのが佐藤正午作品。

「満ち欠ける」のは瑠璃だけではない。
小山内堅(コヤマウチツヨシ)の妻である梢。
そして瑠璃の夫の「正木」の先輩に当たる人も、「月のように満ち欠ける人」なのだと思う。(先輩は、ちょっと死んでみると言って自殺した)。
そのあたりの顛末はぜひ、本書でたしかめていただきたいもの。

ちなみに「正木の先輩もぜったいどこかで生まれ変わってるはずなんだよね」って言ったわたしに、「あ、ほら、最後東京駅で!」と友人が推理したけれど。それもまた、本書の中で。

🌙 追記 🌑🌓🌔🌕
とりとめもなく書きたいこと、追記にします。

なんだか、ふとした表現に泣いてしまいます。特に初代「瑠璃」とアキヒコくんとの会話。
そして、生意気な緑坂瑠璃の台詞。
強がりとせつなさが表裏する文章の迫力がすごくて、思わず、何度も泣きました。

文章の力がカメラワークのように、1シーン1シーン読ませてくれるのですが、これ、映画で見るならぜったいアニメで!と思う。
幼い瑠璃の、憑依した言葉や記憶する言葉は、ああ、アニメで見たらすごいだろうなあ。
本気で妄想しています。


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posted by noyuki at 14:05| 福岡 | Comment(0) | TrackBack(0) | 佐藤正午系 盛田隆二系 話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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