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病院に薬もらいに行って、スクーターで帰ろうとしたら駐輪場でふわっと倒れて、頭打ってそのまま入院になった。
「病院の敷地内だったからよかったですね」
って看護師が言ったけれど、ちっともよくねーよ!!!
入院したって、やることないし。
だいたい今日だって帰りにパチンコに行こうと思って急いでたのにさ。
トラックの運転手してたとき、あの日も道端でふわっと後ろに倒れた。
そう、あのときは、車のドアで頭打ってしこたま流血して入院したんだった。ドア閉めるの忘れてたんだよ。
頭打ったからなのか、元からなのか、あんまりいろんなこと覚えていられない。まあ、覚えてなくったって、そんなに困らないんだけどさ。
入院して調べたら悪いとこもいろいろ見つかった。
肝臓が悪くって治療を勧められた。でも薬ブッチしてゴミ箱捨てたり、絶食忘れてコンビニのおにぎり食べたりしてたら、なんかみんなあきらめモードになっちゃった。
仕方ないよな。
やっぱり、あんまりいろんなこと覚えていられないんだよ。
「家に帰りたいですか?」
ある日のソーシャルさんって言われてる女の人がやってきて俺に聞いた。
「そりゃ帰りたいよ! 治療なんてまっぴらだ。早く帰りたいよ」
「でも。肝臓の癌の治療もしないでそのままになっちゃうんですよね。それもしないで家に帰る方がいいんです?」
「どうせ長くないうちに死ぬんだよ。それならこんなところにいるのはいやだ。家で好きにしたい」
「好きにって、何をしたいんです?」
う! 正直パチンコしか思いうかばなかった。パチンコして、目の前のスーパーでパックの寿司買って、外でそれを食べるんだよ。あの寿司がまたうまいんだよ。わさびだってたっぷりつけてさ。天気がよくて空が真っ青で。パチンコして寿司食いたいんだよ。
「家に帰ってパチンコしてお寿司を食べたいんですね」
ソーシャルさんはにっこり笑った。
「それじゃあ、おうちに帰れるようにしましょうね」
え? いいの? パチンコでいいの?
言ってよかった!
そうして俺は退院できることになった。

