広田町は市の東南部に位置する。
大きなバイパスを東へ進むと高速道路のインター。バイパスは広くて交通量は多いけれど、けっして賑わっているとは言い難い。
バイパス沿いには、大きな郊外型のパチンコ店があって、お向かいにはスーパーがある。休日に渋滞するのはそのあたりだけだ。
スーパーの裏手には大きな団地がある。40年ほど前に建ったらしい。当然高齢化が進んでいる。南側に大きな川。眺めはいいけれど、風が強い町だ。
団地と道を挟んだ一角に「ひろたケアプランセンター」がある。
小さな2階建賃貸ビルの1階が「訪問看護ステーションひろた」で、「ひろたケアプランセンター」が2階だ。
2階にいる3人のケアマネジャーの中で「イケヤ」を担当したのは水野キヨだった。
藤屋先生が「訪看ひろた」に依頼し、「訪看ひろた」の杉茉莉子がキヨに依頼した。
「団地の一階に住んでいる50代の男性なのよ。外傷性くも膜下血腫の既往があって、室内でも外でもよくふらっと転ぶの。それで藤屋先生が、室内の環境整備をしてくれって。わたしたち訪看は医療で入るから、福祉用具だけを介護保険でお願いしたいって」。
「楽な仕事」だと思った。
入院中に認定調査も終わっていて、暫定で福祉用具の手すりだけを位置付ければいい。訪問看護は医療保険で入るので、単位数の計算もいらない。
玄関の段差や風呂やトイレを福祉用具店の石井さんとチェックして、必要なところに手すりを置いていけばいい。利用料だって月1000円かかるかかからないくらいだろう。
あとは、必要になった時にヘルパーとか配食弁当とか手配することになるだろうけど、今のところはそこまではないと思う。
ところが。
イケアこと「池谷惣一郎」は、キヨのイメージしている要介護の高齢者とはぜんぜん違っていて、びっくりすることだらけだった。

