「峻ちゃん・・・」
相手に聞こえるはずもないのに、スギは声を潜めて言った。
「あ・・・ついに、きましたね」
「どうしたらいいだろう・・・」
「とにかく、打ってください。お得意の女王様でいきましょう」
「あ・・・・うん」
男性に扮することばかり考えていた。そうだ、わたしは元SMの女王。自分の土俵に持ち込めば
いいんだ。そう思いなおすと、驚くほどなめらかにキーボードがすべり出していった。
「はじめに言っておくけど、わたしは女よ。レズってわけじゃないけど、あなたのカラダには興
味があるわ。どう? わたしに言葉嬲りされたい?」
少し間が空いた。落ちたのか? それとも・・
「お願いします。誰かにそういうふうにされてみたかった。お願い、わたしを嬲ってください。
男の人はこわい。女の人に・・・そうされたら嬉しい・・・」
「言葉遣いに気をつけなさい。ここでは、あなたはわたしの奴隷よ」
「スギ女王様。承知しました」
役割を楽しんでいるのか? いや、それだけじゃない。彼女のメッセージには、本当のカリンが
見え隠れしているような気がした。
命令口調でカリンの下着をはぎ取った。そうしてその秘部を鏡に映すように強要した。ひとつ
ひとつのメッセージは、間を置いて現れてくる。恥ずかしそうに、そして従順に。それは、キー
ボードのお遊びでもなんでもなく、カリンが本気でそうしていることの証に違いない。
「ちゃんと大きく脚を開いている? 自分の中がどんなふうに見えているのか、わたしに教えな
さい」
「ぱっくりと、赤い肉襞が・・・なかまで・・いやらしいです。白い液体が、いっぱい・・いっ
ぱい出てます・・・」
「いやらしい・・・これだけで濡れてしまうなんて、はしたないわ。指ですくい取って、その指
を舐めなさい」
「ああ・・・そんな・・・」
「命令よ。わたしの命令が聞けないのなら、プレイはおしまいよ」
「 いま 舐めました。 自分のを舐めたのははじめてです。ああ・・・こんな、ことし
てるわたしを、ちゃんと見ていただけてますか?」
「ちゃんと、見てるわ。はしたないカリンを。バイブを持ってきなさい。バイブくらい持ってる
でしょう?」
「持ってます。でも・・・」
「持ってきて、入れてみせなさい」
またしばらく間があいた。カリンはバイブを持ってきたのだと言った。
「でも、女王様。バイブは痛いし、苦手です。それよりか・・わたしのクリトリスを・・・」
「何度言わせるの? 言うとおりにできない子は嫌いよ。直径何センチのバイブ?」
「3.5センチです。突起があって、クリトリスを刺激できるようになっています」
「入るところまで、それを入れなさい。一番奥まで」
またしばらく間が空いた。この間が、とてつもなく想像力を駆り立てるのだ。
峻も隣で、ディスプレイを凝視している。
「ああ・・いっぱいに入って・・・苦しい・・苦しいくらい・・・」
「ちゃんと、奥まで入れた?」
「 入り ました。ああ・・ああ・・もう・・・」
「ダメ。スィッチを入れなさい、一番強くして、スィッチを入れて。浅くしちゃダメ。一番奥を、
自分でかきまわしなさい」
「 ああ・・・ きつい・・・ 苦しい・・・ああ。ああ、あ・・・あ・・」
不思議な感触をスギは味わっていた。
だが、それと同時に、矛盾を感じないではいられない。
直径3.5センチならば、別に大きすぎるというわけでもない、初心者が手を出すくらいの標準的
なサイズだ。これが苦しいとは、いったいどういう訳だ?
「イキそうです。スギ様。イッてもよろしいでしょうか?」
「まだ、ダメよ。もういっかい、鏡に映った姿を見せなさい」
「黒い くろいバイブが まわりに 透明の液が いっぱい・・・ ああ・・ ああ」
「まだ ダメ そのままよ。我慢しなさい」
「ああ・・・ 勘弁してください。女王さま・・」
「堪えきれないのね・・・」
無音。
「イキたいの?」
「・・・イカせてください・・」
「イキなさい。恥ずかしい声をいっぱいにあげて。外まで聞こえるくらいの声をあげて。歩いて
る人に聞こえるくらいの声で。イキなさい」
またも無音。
「ああああ。イカせていただきました。ほんとに大きな声で。恥ずかしい声を出してしまいまし
た」
「チャットしながらイケるなんて。あなた、はしたないわ。でも、わたしの奴隷には、ふさわし
い」
「光栄です。そう言っていただけて。また。ここで会っていただけますか?」
「それは、あなたの心がけしだいよ。いいこと。明日は一日下着を脱いで過ごしなさい。それが
できたら、またね」
「仕事中も、ですか?」
「もちろんよ。ノーパンでストッキングをはきなさい。ガーターベルトで止めて。あなたの濡れ
やすい、いやらしい部分は、吹きさらしで過ごすの。それができたら、また、明日ね」
「承知しました。さっそく朝、ガーターベルトつきのストッキングを買ってまいります。スギ様、
ほんとうにありがとうございました」
そうして、長いチャットからカリンは落ちた。
「すごいですね、スギさん」
峻は、汗ばんだ気色でそれを見ていた。
スギは呆然としていた。
たかが、チャット。しょせん、文字のお遊びだと思っていたのに。
それを・・カリンは・・・
人気blogランキングへどうぞ