要介護2が出た。負担割合は1割。
元気そうに見えるけど、イケヤは要介護2だ。
そして、少しずつだが確実に活動量は低下していた。
ほとんどの時間をベッドでゴロゴロ、テレビを見て過ごす。
食事のことを聞くと「みかんならある」とか「ごはんは昨日炊いた」と言う日もあった。
ごはんに焼肉のタレをたらしてフライパンで炒めて食べたりもする。
「これ、おいしいんだよな」
そういう食事なら作れるらしい。
週に2度ほど、買い物をヘルパーさんに頼んではどうでしょう? スーパーで買ってきてくれますよ、と言うと、「おう! 寿司食べたいよ」と言う。
馴染みのヘルパーステーションにお願いして買い物のヘルパーさんを週2回位置付けた。
にぎり寿司、みかん、おにぎり、それにアジフライと4個セットのコロッケ。
毎回同じものばかりを頼む。栄養バランスもよくない。
お昼は「配食弁当」も持ってきてもらうようにした。
これで少しは栄養バランスもよくなるだろう。
なのに。
そうそうはうまくいかなかった。
「ヘルパーの行く日なのに、いない。鍵がしまっている」
そういう電話がヘルパーの事業所からかかってきた。
イケヤは在宅している日は鍵を開けたままなので、外出に間違いないだろう。
どうして? どこに行ってるんだ?
スマホに電話しても出ないし。
「あとで安否確認しておくから、とりあえずはキャンセルで」
と、キヨはヘルパー事業所の電話に頭を下げた。
大丈夫かな? 倒れてないのかな? キヨは不安になる。
いや、不安になってもしょうがない。
そういう日のイケヤは、たまたま調子がよくて、パチンコに行ったり、買い物に行ったりしてるはずなんだ。
自転車に乗ったり自転車を押したりすると少しの距離は歩けるらしい。そうやってふらっと出ていって、夕方には何事もなかったように家でみかんを食べてるんだ。
「そもそも自分で買い物に行ける人なのに、ヘルパーの買い物を位置付ける必要性はあるのか?っていう話になっちゃうんですよね」
ヘルパーのサービス提供責任者さんは細かいところにうるさい。でも、介護保険上はまったくそのとおりだ。ヘルパーってほんと位置付けむつかしいし、う〜ん、これってNGだよね。
「基本は池谷さんは室外歩行はむつかしい方なんです。主治医からも転倒のリスクが高く要注意って言われてるし。でも、本人は認知機能に問題があって、その認識なく外出しちゃうんですね。徘徊に近い状況かも。危険ですよね。はい......サービス時間はきちんと家にいるように再度伝えます」
電話を切って、キヨはため息をついた。
そんなこと言ったって無理なんだよね〜。イケヤは何言っても自分のやりたいことやるだけなんだよ。
「キヨさん、サ責さんはああ言うけれど、気にしないで」
メインで入っている小林ヘルパーさんが、イケヤの家のドアの前で会った時にそう言ってくれた。
「実はわたし、この団地に住んでてほら、登録ヘルパーだし。別にキャンセルだったら部屋に帰ればいいだけなんだよ。池谷さんはなんか憎めなくってさ。仕事も気楽。だから、このままで大丈夫だよ。それに、ほら、言い方悪いけど、いつまでも外に出れるわけでもないからさ。それくらい、好きにしてほしいんだよね」
目がくりんとして、恰幅のよい小林ヘルパーさん。
この、近所のおばちゃん感覚、ほんとありがたや、である。
と。
そういうわけには行かないことにキヨは気づいた。
今日は 13時半に藤屋先生の訪問診療のはずだ!
イケヤ、今外出中となると、その時間に帰ってこれるのか?

